新内 相模派家元 富士松延治太夫
記念演奏会

 舞台風景2 
 
若木仇名草 (四ツ谷) 【 若木仇名草 (四ツ谷) 】

この曲は、初代鶴賀若狹椽の作で、「明烏」と共に新内の2代表曲の浄瑠璃である。
翅蝶三郎という武士が零落して男芸者となりお宮という女房がいるにもかかわらず、遊女の此糸に馴染み、稼業を顧みないので女房のお宮は密かに此糸の許を訪れ、縁を切ってくれと頼み込む。此糸は情けと義理にひかされて、余儀なく蘭蝶と縁を切ることを約束し、その後で心中しようと約束するというのが本曲の筋である
明烏夢泡雪 (浦里部屋) 【 明烏夢泡雪 (浦里部屋) 】

この曲は、明和6年7月3日、江戸三河島近くの田んぼで浅草蔵前の伊勢屋の養子伊之助が、吉原の遊女三芳野と心中した事件を浄瑠璃に仕組んだもので、作者は初代鶴賀若狹椽である。

「明烏夢泡雪」(雪責め)の前半の部分です。
日高川入相花王 (飛び込み) 【 日高川入相花王 (飛び込み) 】

初代鶴賀若狹椽が新内節に移したものと伝えられる。
恋に狂った清姫が、安珍を追いかけて日高川まで来たが、舟長が渡してくれないので、蛇体と化して川を渡り、安珍が隠れている道成寺の鐘に巻きつき、焼き殺すという嫉妬のあまりみた夢で、新内節では道成寺に着くまで。川に至るまでが上の巻きで、途中、村人、早飛脚、修行者とのやりとりがあって、チャリがかった特殊な曲筋で語り分けられ、清姫の高ぶっていく心を描く。下の巻きでは、<飛び込み>と言い、船頭との問答が中心。

チャリ:滑稽味を持ったものを「チャリ物」と呼んでいる。
明烏後正夢 (とい弔い) 【 明烏後正夢 (とい弔い) 】

初世富士松魯中作の新内節としては珍しい道中ものである。<明烏夢泡雪>の後編ともいえ、廓を抜け出た裏里、時次郎の二人が深川猿江の慈眼寺にたどりつき、情死をはかるが、所持していた名剣小烏丸の奇特と、伯父である住職の法力によって蘇生し、夫婦の契りを結ぶという筋。
帰咲名残命毛 (伊太八) 【 帰咲名残命毛 (伊太八) 】

津軽藩江戸詰祐筆役原田伊太夫が去春より新吉原1丁目太左衛門店太四郎抱え遊女尾上に馴染み奉公の間を欠くに至り暇を出され、寄る方もないので尾上と心中を申し合せ、この夜、尾上所持の小刀で先ず女の咽喉を一ヶ所突き次に己の腹一ヶ所を突いたが、死にきれぬ中、家人に騒がれて未遂に終り、15日入牢。人々の騒ぎの中に亭主が、尾上身請の客と言うのは伊太八の国許の叔父で、やがて両人本腹次第、自分が仲人となって祝言させようといってハッピーエンド。
若木仇名草 (お宮の口舌) 【 若木仇名草 (お宮の口舌) 】
新内舞踊
立方 花柳 佐郁

新内舞踊と新内。また一味違った新内のふいんきを味わっていただけたと思います。

蘭蝶:新内代表曲の一つで、安栄天明期の鶴賀若狹椽作品。実説というようなものはあきらかではないが端物の性質から、多分その頃、江戸にあった事実を脚色したものに相違なく、当時婦女子に騒がれた2代目市川八百蔵の声色身振りを真似て小屋がけの興行で是も、大いに人気のあった松川鶴市をモデルにしたものではないかと思う。
鳥辺山心中 (四条河原) 【 鳥辺山心中 (四条河原) 】

将軍上洛に従って京に上がった菊地半九郎は、祇園に遊んで清純な遊女お染と馴染みを重ねた。やがて江戸に帰る日が近づいた。初見世から揚げづめで他の客をしらぬお染の不憫さに、半九郎は家重代の刀を売って身請けの上、親元へ帰してやろうと思う。
友人市之進と祇園で酒宴の最中、市之進の弟源三郎が訪れ、遊蕩にふける兄を諫める。兄弟の争いから半九郎への面罵となり、武士の意地から二人は四条河原で斬りあう。源三郎を殺し最早これまでと覚悟を決める半九郎に、お染も共に死にたいとすがりつく。誂えた春の晴着を死に装束に、鳥辺山へと二人は向かう。
おさん茂兵衛 (近江路) 【 おさん茂兵衛 (近江路) 】

大経師以春の女房おさんは、親許から金の調達を頼まれるが、夫に打ち明けられず、茂兵衛の才覚に頼る。初暦を得意先に配って廻り、祝儀酒でほろ酔い加減の茂兵衛は、白紙に主人の印を捺すが、それを番頭に見とがめる。日頃から茂兵衛を慕っていた下女のお玉もおさんをかばい、自分が頼んだのだ・・・と罪を着る。夜、おさんが、お玉へ詫びに行くと夜毎、以春が部屋へ忍んで来て困っている事を話す。おさんは、お玉と寝床を替える。意外や、茂兵衛がお玉を思いやって忍んで来て、おさんとは知らず不義に陥る。おさんと茂兵衛はそこを逃れ、奥丹波へ隠れ住もうとするが密告で捕らえられ、二人は馬で市中を引き回され、粟田口へと送られる。しかし、和尚東岸により、法衣の許に救われる。
無法松の一生 (小倉祇園太鼓) 【 無法松の一生 (小倉祇園太鼓) 】

若木仇名草 (心中場) 【 若木仇名草 (心中場) 】

若木仇名草 (四ツ谷)。お宮の口説などの、最後の段です。
与話情浮名横櫛 (源治店) 【 与話情浮名横櫛 (源治店) 】

養子だった与三郎は、実子が生まれ、家督をゆずろうとする義理だてから放蕩に身をもち崩す。藍玉屋に預けられた与三郎は、土地の親分赤間源左衛門の妾であるお富を見そめ、二人が会っている所を源左衛門に見られる。与三郎は刀傷を受けたが命だけはとりとめた。お富は海へ身を投げたが助けられ、和泉屋の大番頭多左衛門に囲われる。ゆすりかたりに身を落とした与三郎が偶然、3年ぶりにお富と再会。騒動から「切られ与三」と呼ばれるようになった事を語り、今のお富の境遇を責める。お富は、多左衛門の妾ではない事実を言い、多左衛門は金を与え、きちんとした生業につくようにすすめる。お富は、多左衛門に与三郎を兄だといいつくろうが、多左衛門こそお富の実の実兄だった。
一本刀土俵入り (取手宿吾孫子屋) 【 一本刀土俵入り (取手宿吾孫子屋) 】

利根川に近い取手の宿。親方に見放された江戸へ向かう取的の駒形茂兵衛が一文無しのふらふらで通りかかる。同情した安孫子屋の酌婦お蔦は、櫛、簪、持ち金のありったけを与えて励ます。(今回はここまで)

それから10年、横綱への夢破れ茂兵衛は渡世人になってしまった。飴売りとなって一人娘のお君と細々と暮らすお蔦の許へ、行方不明だった夫の船印彫師辰三郎が帰ってくる。喜びもつかの間、辰三郎はいかさま博打をして土地の親分に追われる身だった。絶体絶命の場に、やっとお蔦をさがしあてた茂兵衛が来合わせ、追手の博徒をことごとく叩きふせ、お蔦一家を逃がして、昔の恩に報いる。